自己破産を申立てると、全ての財産を没収されると思っていませんか?
実は、全ての財産を没収されることはありません。
自己破産をしても自由財産と言って、自己破産者が自由に使える財産が認められています。
また、自己破産者は弁護士費用を用意できないことが少なくありません。
そんな時には、法テラスに相談すると、裁判費用を貸出してもらえます。
返済義務が解消
自己破産を裁判所に申立てて認可されるとどうなんでしょうか?
そう、自己破産者は全ての借金の返済義務が免除されます。
(税金や公的保険、損害賠償金などの債務は免除されません)
その代わり、自己破産者の所有する家や車、高級家具などの財産があった場合は差押えられ、裁判所から選任された破産管財人によって売却されます。
その売却代金が債権者に平等に分配されます。
ただ、現実としては、自己破産をするような人にめぼしい財産などあるわけがありません。
従って、そのような手続きが行われることはほとんどありません。
自己破産者に残される自由財産
仮に、車や預金が残っていたとしてもすべてが差押えられるわけではありません。
一定の預金や家具などは自己破産者に残されるようになっていることをご存知でしょうか。
それを自由財産と言います。
つまり、自己破産後も自由に使えるということです。
自由財産として認められるものとしては、99万円以下の手元にある現金と、20万円以下の預貯金があります。
それと、生活していく上で必須となる家具や電化製品なども自由財産となります。
ただし、家具に関しては、1点しか所有が認められないことで、2点目からはすべて差押えの対象になる物と、数に関わらず自由財産となる物に別れます。
1点しか所有が認められない物
・テレビ
・レコーダー
・ラジオ
・パソコン
・冷蔵庫
・エアコン
・洗濯機
・電子レンジ
・掃除機
・鏡台
など。
何点でも自由財産とされる物
・洋服タンス
・ベッド
・食器棚(食器具)
・調理器具
・冷暖房器具(エアコン以外)
・衣類
など。
その他、退職金に関しては75%程度(裁判所によって変動)が自由財産として認められています。
生命保険の解約返戻金は差押えの対象になりますが、20万円までは自由財産です。
なお、自営業者や農家の人が仕事で使用する機器や道具などは、すべて自由財産とされます。
ちなみに、自己破産が確定した後で取得した財産は全てが自由財産となります。
従って、自己破産後に働いて得た給与などはすべて自由に使うことができます。
当然、自己破産前の借金の返済に充てる必要はありません。
破産財団から放棄された物も自由財産
仮に、破産財団(換価処分すべき財産)に組み入れられた財産であったとしても、以下のようなことで換価処分をしないことがあります。
・処分するための費用の方が売却代金より高くつく
・買い手が付きそうにない
その場合、破産管財人はこのような財産を破産財団から除外します。
これを「破産財団からの放棄」と言います。
破産財団から放棄された財産はその時点で自由財産とされ、自己破産者に戻されます。
法テラスからの支援
自己破産を申立てるにしても、法的な手続きは難しく面倒です。
そのため、弁護士に依頼することが多くなります。
ただ、自己破産をするような状態の人は、弁護士への報酬を支払うことができません。
そんな資金的余裕の無い自己破産者に資金を貸出してもらえるのが「法テラス」です。
法テラスとは、法的トラブルの解決を目的としたサービスを提供するために設立された法務省管轄の法人のことです。
正式名称を「日本司法支援センター」と言います。
法テラスからの支援内容
法テラスには「民事法律扶助業務」というものがあり、経済的に困窮している人に対し、3回(1回30分程度)まで無料で弁護士が法律相談を受けています。
また、相談の内容から弁護士の協力が必要だと判定されると、「代理援助業務」によって弁護士費用を立替えてもらえます。ただし、あくまでも資金的な負担能力のないことが前提であるため、依頼者の収入が「一定基準以下」であることが必要です。
また、立替えるのは弁護士費用だけであり、裁判所に納める予納金などの費用は依頼者自身で用意できることが条件になります。
貸出申請の条件
依頼者の収入制限は以下になっています(東京・1級地の場合)。
・単身者:月収20万200円+家賃額(上限5万3,000円)以下、資産(預貯金など)180万円以下
・夫婦:月収27万6,100円+家賃額(上限6万8,000円)以下、資産250万円以下
なお、扶養家族がいる場合は人数分だけ制限額が緩和されます。
また、法テラスの支援は以下の条件になっています。
1.初めに無料相談を受けなければなりません。
弁護士費用の立替だけの申込はできません。
2.費用を立替えてもらうには、審査に通らなければなりません。
費用の立替が認められるのは、自己破産の認可の可能性がある場合です。
明らかな「免責不許可事由」によって、認可されない可能性が高い場合は審査に通りません。
3.審査に通ると、法テラスの立会いの下、法テラスから紹介された弁護士と委任契約を結ぶことになります。
弁護士報酬は法テラスが直接弁護士に支払います。
4.返済は毎月5,000円~1万円を銀行口座からの引落しになります。
(利息は付きません)
まとめ
自己破産の制度は自己破産者の経済的な再生が目的であるため、生活の保障が与えられています。
また、そのための資金的援助をしているのが法テラスです。